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Shoot it! - #040 - WCG隆盛の陰。企業主導大会の意外な弱点

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Shoot it! - #040 - WCG隆盛の陰。企業主導大会の意外な弱点
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まもなくWCG(ワールド・サイバー・ゲームズ)の2007年大会が米国シアトルで始まります。日本からは既報の通り、活忍犬選手が格闘ゲーム『デッド オア アライブ 4』で出場します。そのほかの国も予選大会がほぼ終了しています。現在は世界中の強豪選手たちがシアトルへ向けてトレーニングに励んでいることでしょう。

しかし今年、トルコの代表選手は参加できません。

日本のEスポーツ情報サイトnegitaku.orgによると、トルコでWCG予選を開催していたSiberlig社は、サムスン電子を筆頭とする協賛企業の金銭サポート中止により、予選の開催ができなくなりました。賞品提供レベルの代替オファーは在ったのかもしれませんが、金銭サポートの中止ということは、予選を開催してもシアトルへの飛行機代が出ないということです。

また、スペインでもサムスン電子ほかのスポンサーが協賛金を7割カットしたため、参加種目は、カウンターストライクとFIFAの2種目のみ。ちなみに2006年はカウンターストライク、FIFA(サッカー)、プロジェクト・ゴッサム・レーシング、スタークラフト、ウォークラフト3、ニードフォースピード、デッド オア アライブの7種目で出場し、国別世界ランキング11位の好成績でした。

この決定は予選大会主催者も、世界を目指して頑張ってきた選手たちにも残念なことでしょう。しかし、この事件から世界のEスポーツ関係者は学ぶべきことがあります。それは、1社主催、スポンサー主導のゲーム大会におけるメリットとリスクです。スポンサーが強ければ話はトントン拍子に進むというメリットはあります。しかし、スポンサーが手を引いたらすべてがおしまいになってしまうのです。

実はいま、サムスン電子グループでは大規模なリストラが行われています。経済新聞などの報道によると、サムスン電子の第2四半期の営業利益は前年同期比を36パーセントも下回りました。その差額は推定で600億円以上。とんでもない減収です。こうなると真っ先にカットされる支出は広告費です。ゲームに限らず、スポーツの協賛など考えられないという状況になることは想像に難くありません。むしろWCG本戦のメインスポンサーを降りなかったことが不思議なほど。WCG本戦スポンサーを支えることがサムスン電子の最後の良心と言うべきかもしれません。

しかし、それもいつまで続くでしょうか。サムスン電子がこの世からなくなることはなさそうですが、Eスポーツから撤退するという可能性はゼロではありません。スポーツの世界ではスポンサーの撤退で運営が立ち行かなくなることは珍しくないからです。かつて日本のJリーグでは横浜フリューゲルスがスポンサーの佐藤工業の撤退により消滅しました。同じく出資者だった全日空は横浜フリューゲルスとマリノスが合併したあと、マリノスの株主になっていましたが、9・11のテロによる航空業界不振の影響で1993年に運営スポンサーから撤退し、現在はユニホームの広告主という立場に留まっています。また、2007年まで日本サッカー協会のスポンサーだった日産自動車は、2008年のスポンサー契約を継続しませんでした。横浜Fマリノスの運営は継続していますが、協会からは一歩引いた形です。

やや話が逸れましたが、サムスン電子がスポンサー縮小基調になった影響は、トルコやスペインだけのことでは無く、世界的に予算を縮小していることと想像できます。では、なぜトルコやスペインが影響を被ってしまったのでしょうか。その理由はただひとつ。サムスン電子のみに依存した運営だったからだろうと推測します。サムスン電子以外にもスポンサーを獲得できた国は参加でき、サムスン電子だけに頼る国は参加できない。WCGではこうした状況になっていくのではないかと思います。

実は、サムスン電子がWCGのスポンサー規模を縮小した時期は今回だけではありません。2002年の第2回WCGで大幅な規模縮小を図っています。2000年のWCGC、2001年のWCGはすべての国の予選においてサムスン電子がサポートしていました。WCGはサムスンの大会という認識の根拠はここにあります。2001年のWCG第1回は各国の予選開催のほか、本戦を取材する各国の記者たちもWCGから招待されました。実は私も1回目を記者として招待して頂きました。37か国、430人の選手団という規模は現在の半分ほどですが、記者も含めて膨大な人数の航空券やホテル代をWCG、つまりサムスン電子が負担したことになります。

WCGはサムスンの大会。そういう認識でいたところ、2002年のWCGでサムスン電子は大幅に予算を減らしました。もっとも、これはWCGの立ち上げ時だけサムスン電子が大盤振る舞いをしたとも言えます。2000年、2001年が特別だったと言えます。しかし、2002年以降、予選をサポートする国、しない国を選別するようになりました。これは各国の成績だけではなく、サムスン電子のブランド戦略とも連携していたようです。このとき日本もサムスンの庇護から外れてしまいました。2002年以降、日本のWCG予選は常にスポンサー探しの苦労がつきまとっています。それでも日本の歴代の関係者は諦めずに予選を開催し続けました。これは賞賛に値します。今年、日本がサムスン電子の動向と関係なく、1種目とはいえWCGに選手を送れることも、早くにサムスン電子依存体質から脱却して苦労してきたおかげかもしれません。

今年、WCGの韓国コミュニティ「WCGZONE」はインテルを冠スポンサーに迎えて、アジア太平洋の15ヶ国が参加するゲームリーグ『Rampage Asia』を開催します。最大手のインテルがアジアのEスポーツを支援してくれることは喜ばしいことですが、そこに来年、再来年の約束はありません。毎年定期的に開催され、記録と歴史を刻んでいくような大会は、冠スポンサー1社では難しいと言えるでしょう。

そこで注目したい大会はアメリカの「CPL(サイバーアスリートプロフェッショナルリーグ)」やスウェーデンの「ドリームハック」、フランスのESWC(Eスポーツワールドカップ)です。それらの大会は、複数のスポンサーと対等に交渉し、良好な関係を築いています。それができる背景には、スポンサーの有無にかかわらず、揺るぎなく存在するプレーヤーや参加者の存在があります。イベントのイニシアチブをイベント参加者が握っているからこそ、イベント主催者はスポンサーと対等の立場になる。そういうチカラのあるイベントなら、スポンサーは営業上不可欠なアイテムとして活用できるわけです。冠スポンサーが在ったとしても、もし今のスポンサーが降りたらウチに声をかけてくれ、というスポンサー候補が現れます。

世界大会としてブランドが確立したWCGは、そろそろ冠スポンサーへの依存体質を脱却し、複数スポンサー受け入れてさらに発展を目指すべき時期に来ています。早く手を打たないと"冠スポンサーの意向次第で終了"というリスクが大きくなりそうです。



WCGオフィシャルサイト。筆頭スポンサーはサムスン電子。協賛会社もサムスン系が多い
《杉山淳一》

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