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【DIEC2005】 ノーラン・ブッシュネル氏が過去から現在・未来を語った[3]

ゲームビジネス その他

基調講演に続いてはシンポジウム第1部「ゲームデザイン・テクノロジーの源流」としてこの産業の正に「生き字引」による講演が行われました。第1部では上村雅之氏がコンダクターを務められました。

・ノーラン・ブッシュネル氏(アタリ社創業者、元会長)
・大墻敦氏(NHK衛星放送局制作部チーフ・プロデューサー)
・岩谷徹氏(株式会社ナムコ インキュベーションセンター コンダクター)
・上村雅之氏(任天堂株式会社アドバイザー、立命館大学教授)

まず壇上に上がったのは『PONG(ポン)』の作者であり、アタリの創業者でビデオゲーム産業の父と呼ばれるノーラン・ブッシュネル氏です。滅多に講演を行うことのないブッシュネル氏ですが、未だ衰えない鋭い視点を提供してくれました。

ゲームデザイン・テクノロジーの源流 ノーラン・ブッシュネル氏
ブッシュネル氏はゲームデザインの歴史を振り返るところから話を始めます。全ての始まりは1961年にSteve Russel氏が制作した「Space War」(PDP-1)です。オシロスコープを応用したもので、ピンを操作することによって2つのロケットが打ち合うというものでした。

1966年にはブッシュネル氏は初めて自作のゲームとして同じくPDP-1で動く「Fox & Geese」を制作します。パンチカードでプログラムされたもので3週間かけて動かせるようになったそうです。ゲームは好評でした。しかし当時の学校にあったコンピューターは100万ドルもする高価なものでした。商売になるという確信はあったそうですが、さすがに当時は断念せざるを得なかったようです。ブッシュネル氏はカリフォルニアに行きスタンフォードの人工知能ラボで安いミニコンに出会うことになります。

1970年には『PONG』の原型になる『Computer Space』を制作します。これは左右に表示されたバーを上下に動かしてボールを打ち返すものです。打ち返すの失敗すれば相手にポイントが与えられます。1972年にはマグナボックス社が「オデッセイ」と呼ばれる家庭用コンソールを発売します。この秋には『PONG』がリリースされバーやレストランなどに置かれ空前のヒット作となりアタリは大きな成長を遂げることになります。後には家庭のテレビで遊べる『Home Pong』を作り、こちらもヒットします。

歴史の転換点は1977年でアタリは、「Atari 2600」という製品を発売します。一番の売りはカセットを交換することで幾つものゲームを遊ぶことができる点で、今の家庭用ゲーム機にも通じるものです。Atari 2600ではあらゆるゲームが遊べました。128kbyteという非常に限られたメモリでもチェスなどの複雑なゲームが実現できました(チェスのパターンは128を遥かに超えます)。しかし1986年にはバブル、俗に言うアタリショックが訪れ市場崩壊という憂き目を味わいます。ブッシュネル氏はこの時のことを「あれはやりすぎた」と言って会場の笑いを誘っていました。

ちなみにこの間、次に登壇する岩谷氏のナムコとの提携もあり、若かりし頃の中村雅哉氏(ナムコ創業者で現・バンダイナムコホールディングス最高顧問)とブッシュネル氏の記念写真なども紹介されました。

Elements of Game Design

次にブッシュネル氏は「Elements of Game Design(ゲームデザインの要素)」とした話をしました。「Timing」は最も時代を表すゲーム、「Clear Objectives」は明確な目的を提示すること、「Predictablity」はゲームにおいて予測性をどこまで持たせるかというもの、「Risk and Reward」はリスクとリターンのバランスのこと。例えば、『PONG』において最も良いショットは、打つことが最も難しいものであり、決まれば効果が高いけれど打ちそこなうリスクもあり、そのややこしさがゲーム性になるというものです。そのほかには「Story」や夢を感じられる「Fantasy」を挙げました。

続いてブッシュネル氏はゲーム産業における問題点などについて自分の考えを述べました。

最初は「フォトリアリスティック」の問題です。ブッシュネル氏はこの問題について、フォトリアリスティックを追求した結果、差別性を減じた、「技術に基づく差別化は不可能だ」としました。またこのことがコストの上昇を招き、今では制作費用は映画並みになり、このことが更にリスクを取ることを困難にした結果、イノベーションが失われていると批判しました「イノベーションはリスクを取る人から生まれるが、ハイコストはそれを失わせる」。加えて、フォトリアリスティックを追求したことで表現の問題でゲームが教育に与える影響等が深刻になり、政治的な介入を招いているとしました。

次にゲーム人口の問題です。米国では1982年には4400万人のユーザーがゲームを遊んでいました。しかし現在ゲームを遊んでいるのは1800万人に過ぎません。ブッシュネル氏はこれだけゲーム人口が減少したのは、時々ゲームをしているカジュアルゲーマーや女性のユーザーが失われた事にあるとして、残虐性の問題などを挙げました。ブッシュネル氏は「ゲームはアルツファイマーや機能障害に効果がある。高齢者は毎日ゲームをしないが、それは間違っている。全員がゲームを楽しむべきだ」として、カジュアルゲーマーの興味を刺激する必要を訴えました。

ゲームの持つ教育的な効果についても指摘しました。ゲームは教育効率を上げる効果があり、例えば米軍ではアラビア語を学ぶのにNRPGで勉強していて、これはゲームを使用しない場合と比べて3倍早く教育ができることが分かっているそうです。それ以外でも生涯学習という観点から、「Edutament(楽しみながら学ぶ)」の可能性を指摘しました。

将来に関することについては、2012年までにはハードは意味を無くし、システムはオープンソースなものになるのではないかと述べました。ゲーム、DVD、PCといったものが徐々に統合されていき、2012年には全てが1つのものになるとしました。それには、参入が簡単でインターフェイスが簡単であることが求められるとしました。

その点に関してブッシュネル氏は任天堂のアイデア(レボリューションのコントローラー)は非常にポテンシャルがあるものだと評価しました。「多くの場合、コンピューターを嫌いという人はキーボードが原因になっている。今のコントロールはちょっと触りにくいし怖い。カジュアルゲーマーはインターフェイスが嫌いなのだと思う。ここを変えることができれば非常に大きい」としました。

そうした上で「The Future Winner(将来の勝者)」の要件を5つ挙げました。1つ目は「Best Tools Win」最も良いツールを作れた所が勝つ、「New User Interfaces Win」新たなインターフェイスを構築できた所が、「Sequels will Start to Fail」続編では駄目になる、「Innovatiopn Trumps All」イノベーションが全てをひきつける、「Open Systems Trump」より多くの人が参加しデザインすることが重要、としました。特にブッシュネル氏は「今のインターフェイスに満足していない人をいかにひきこむか」ということを強調しました。

ソーシャルゲームの可能性

最後に「私はとにかく誰もやっていないことをやろうとしている」として「ソーシャルゲーム」の可能性を披露しました。ブッシュネル氏が考えているのはレストランなどで遊べるようなソーシャルゲームで「モノポリー」や「麻雀」のように、そのゲームによって会話が増える、終了時にはもっと仲良くなっている、ゲーム画面よりも相手の顔の方を見るような、社会的な交流やふれあいが増えるようなゲームを考えているそうです。

「綺麗な女性に1杯おごるよと言ったらブッ飛ばされるだろうけど、ゲームなら、、、そう上手くはいかないだろうけど(笑)」と言って笑いを誘っていました。ともかく、そそういう社会的なリンクを作る、"How are you?"といえるようなゲームを構想しているそうです。

ブッシュネル氏は楽しめるレストラン「チャックEチーズ」の創業者でもありますが、新たに大人向けの楽しめるメディアレストラン「uWink Media Bistro」を計画しているそうで、そこでソーシャルゲームを提供するつもりだそうです。同じ店や世界中の店にいる他の席のお客さんと協力して遊ぶものや、バーで横に座っている同士で楽しめるようなゲームを考案しているそうです。

ブッシュネル氏の話は歴史的なものから現在の問題点の指摘そして最後は将来展望へとゲームの生みの親の眼力は未だ衰えていないことを示していました。最後のソーシャルゲームの話は「誰もがゲームを遊ぶべきだ」というブッシュネル氏の信念を表しているようであり、ゲームの持つ社会性をもっと活用すべきというメッセージにも思えました。

蛇足になりますが、ブッシュネル氏は最後まで会場の最前列で他の講演を聞いておられました。後に壇上に上がった講演者もゲーム産業の創始者で、少なからず影響を受けているだけあって、敬意を表している所が伝わってきました。大きな体と手で優しい眼差しは正に父という雰囲気を与えていました。
《土本学》

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