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【インサイド・テクノロジー】第4回 NDSに見るP2P技術とその展望

ゲームビジネス その他

P2Pとは何か

P2Pとは「Peer to Peer」の略で、サーバーを介さない直接のコンピュータ同士の通信の事を言います。

通常ゲームでネットワーク対戦をする場合は、サーバーに接続して皆で同じ世界を共有してRPGをやったりするわけです。このような据え置き機の場合は2人対戦ぐらいの場合ならば、コントローラーを二つつないでできるわけで、わざわざ通信する必要はありませんが、NDSのようなゲーム機の場合二台のマシンを接続して直接通信する必要があります。これがP2P通信というやつです。

NDSの場合はとにかく対戦するにはP2P通信が必要になるわけです。おまけに無線LANまで持っているわけですから、不特定多数のNDSと同時にP2P通信が可能になっているわけです。

P2Pが今流行っている

時代はなんでもP2Pになりつつあります。

一昔前はP2Pというと、通信が外部から判らないために匿名性が高く、あまり良い用途に使われることはありませんでしたが、現在では多人数P2Pを意識したソフトが色々と開発され面白くなってきています。

たとえばSkypeというソフトをご存知でしょうか。Skypeはパソコンを使ってただで電話をするソフトで、インターネットを使って音声で会話をするので電話代はかからないという代物です。Skypeは電話をかけるときに相手を探すのには一度サーバーを使って検索をするのですが、いったん相手を見つけたらあとはサーバーを使わずに直接音声をやり取りしています。この直接のやりとりがP2Pと呼ばれるわけです。

このSkypeのようなサーバーを使った通信とP2Pの通信を用途に応じて使い分けるような通信方法を「ハイブリッドP2P」などと言います。サーバーを使った方が便利なことはサーバーをつかって、特にサーバーを使う必要の無いことはP2Pで、という使い分けでネットワーク通信を有効に活用しているわけです。

多人数P2Pネットワーク

そして、近年盛り上がっているP2P技術の一つに「多人数P2P」という物があります。これは、サーバーを全く使用せずに大多数のコンピューターがP2P通信を多対多で行うような形態のことです。

つまり上で紹介したSkypeの場合、相手のユーザーを探すのにサーバーを使っていましたが、この部分ですらサーバーを使わずに特定の相手を検索するような方法を使用するのです。これは「分散ハッシュ(DHT)」と呼ばれる技術によって実現可能なのですが、簡単に言うと「噂を流す」ような感じで今現在接続しているユーザーに「あいつはどこにいるのか」と問いかけると、その噂がドンドン広まっていって最終的に特定の相手が見つかるといった感じです。

他にも多人数P2Pの場合はサーバーが無く、ネットワーク全体の概要が簡単には判らないので、普通のことが普通にできなかったりします。

通常の多人数参加型RPG(MMORPG)なんかでは、一つのマップを参加してるプレイヤー全員で動き回る事が可能ですが、これをP2Pだけでやろうとすると大変です。

まずおおもとのマップを誰が持つかという問題が発生します。サーバーは存在しませんから、マップを確実に保管しておけるコンピュータが存在しません。次にその問題が解決できたとしても、そのマップをどうやって全員に配信するかという問題がでてきます。P2Pネットワークでは全員が一箇所に繋がっているわけではなく、いろんな繋がりを辿って行くと皆どこかで繋がっているという物です。データをうまく隅々まで配信するのは結構大変です。

ほかにも色々問題があって、これらの問題を解決するために現在いろんな研究がなされているわけです。

多人数P2Pはゲームに応用できないか

上で述べたように多人数P2Pというのは普通の事が普通にはできない場合が多々あります。しかしそれは逆に考えると「変なことが色々できる」ネットワーク形態なのです。逆手にとって斬新なソフトウェアを作ることができないわけはありません。

現にWinnyというファイル共有ソフトは多人数P2Pネットワークの特性を非常にうまく利用して、匿名性と通信効率を高める事に成功していました(詳しくは割愛)。そうくれば必然的に考えることが「ゲームにも多人数P2Pが利用できないか?」ということです。

多人数P2Pという形態を利用してゲームをつくると、通常のサーバーを利用した多人数参加型ゲームとは異なる要素を持ったゲームが出来る可能性があります。

しかもNDSは多人数P2P通信が非常に容易にできます。無線での接続をするわけですから、自分の周りのNDSに手当たり次第に通信することができます。これらのNDSの通信がどこかで繋がって広がれば、非常に大きな多人数P2Pネットワークを形成することが可能です。これが何かに利用できないでしょうか?

皆でマップを持ち寄るRPG

先ずRPGを考えて見ましょう。特徴としては「マップを持ち寄る」というのがP2Pの肝になってきます。

つまり、一人一人が小規模なマップをもっていて、プレイヤーは自分のマップと、現在接続している近くのNDSのプレイヤーが持っている別のマップ上を移動できるという事です。こうすることによって、マップに広がりがでてきてしかも近くのプレイヤーと遭遇することができます。これはもうMMORPGとして成り立ちますね。

しかも通常のMMORPGとちがって、実際に自分が旅行なんかしたときには周りのNDSも全く違う人のものになりますから、マップも全く違うものがでてくるという面白みが出てきます。つまり実生活の移動とか環境の変化が、ゲームのステータスをダイレクトに変化させてしまうという斬新な要素をもりこめてしまうわけです。

自分のマップには自分の用意した「謎解き」を配置しておいて、マップに入ってきてユーザーにそれを解かせるとか、単純に自分のマップに入ってきたプレイヤーを戦闘をするとか、色々な事ができそうですね。

他のプレイヤーと動的に遭遇するストラテジー

上の「マップを持ち寄る」という事をストラテジーで考えて見ましょう。

自分は自分のマップ上で自分の文明を育てます。そしてその対戦相手は自分の近くにいるNDSのプレイヤーです。自分の戦闘ユニットを引き連れて対戦相手のマップに入り込んで戦う事が可能でしょう。

これもまた自分が他所へ移動することによって、故意にネットワークから離脱したり、他のネットワークに参加することができるという要素が加わってきます。

一般的なモデル

このようにマップを近くのプレイヤーと共有するような形でやると、わりと一般的なゲームに多人数P2Pが応用できそうです。

このモデルをもっと一般化すると、何かゲームに使用する「ステータス」の一部をP2Pによって共有、あるいはP2Pによって変化させてゲームをプレイすることで、多人数P2P特有の面白さをもったゲームが作れるという事になります。

このモデルがRPGやストラテジー以外のどんなジャンルのゲームに適用できるのか、あるいはRPGであっても他のステータスを共有させることで新たな面白さを引き出せるかもしれない、という事を考えると斬新なアイデアがでてくるのではないでしょうか。

多人数P2Pのコンシューマゲーム機への応用にはまだちょっと早い気もしますが、この新たなゲームにおける可能性を考えてみるのもまた一興です。
《土本学》

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