その昔、「狭い日本そんなに急いでどこへ行く」が流行語になりました。それから30年、日本はますます狭くなりつつあるようです。もはや日本の何処も行くのに1日で行けない場所はありません。もちろん狭くなったのは日本だけじゃなく、世界もそうです。少し前の書物に未来的な物の代表として書かれた情報ネットワーク・・・インターネットはその原動力です。
10年も前なら、皆さんも経験があるかもしれませんが、時々雑誌に掲載される海外事情に垣間見るだけであった太平洋の向こうや地球の裏側のゲーム事情は正にリアルタイムで耳に届くようになりました。
しかし我々ユーザーにとって嬉しい時代も、売り手側にしてみれば少々のやっかいさを孕んでいるようです。
日本のゲームメーカーはファミコンがヒットした十数年前から積極的に海外に戦線を広げました。今でこそ全世界で日本のメーカーの天下という事は無くなりましたが、まだまだ優れたゲームを多く供給しているという認識がされているようです。もし日本で作ったゲームをアメリカで売るとなるとどんな作業が必要でしょうか。一般的にローカライズと呼ばれる作業は、現地語への翻訳、難易度調節、グラフィックテイストの見直し、などが中心です。「All your base are belong to us(*)」ではありませんが、日本語のニュアンスをちゃんと翻訳するのは大変な作業です。
もし人気ゲームを先に海外で発売した、なんてことになると烈火の如く非難が巻き起こるのは目に映るようです。また、もし一度出来の悪いゲームだという評判が立てってしまえば、それはたちまち全世界に広がってゆくことでしょう(もちろん良い評判も広がるでしょうが、往々にして悪い噂ほど伝わりやすいものです)。更に、地域ごとのプロモーションの独自性を保つのは容易では無くなります。
これらを解消する最も手っ取り早い方策は全ての地域で同時に発売することです。大手パブリッシャーは注目作品から、このような方法を取る方針を固めたように見えます。
任天堂は昨年末に発売した『マリオカート ダブルダッシュ』を全地域で2週間以内に発売しました(日11/7・米11/17・欧11/14)。世界一のパブリッシャー・エレクトロニック・アーツは『007エブリシングオアナッシング』をこちらも約2週間で全世界向けにリリースしました(日2/11・米2/17・欧2/27)。また、コナミはコラボレーションで注目を浴びた『メタルギアソリッド: ザ・ツインスネークス』を3週間以内に全世界で発売しました(日3/11・米3/9・欧3/26)。
私達はヨーロッパのファンに長い時間待ってもらいたくありません、そこで任天堂オブヨーロッパとも協力してローカライズのプロセスの短縮化を進めています。その結果として『マリオカートダブルダッシュ』は全てのマーケットでほぼ同時に発売することが出来ました。私達はローカライズに多くの時間と資源を投入して、質の高いローカライズスタッフを使って、その結果完成したゲームは業界の中でも特にローカライズの質が高いという事をぜひ理解して欲しいと思います。もちろん任天堂はヨーロッパのユーザーにもっと多くの新しいゲームを提供する為にこの体制を強化する必要があると理解しています。
と任天堂の宮本茂氏はコメントしています。体制として整えたという事は今後も『マリオカートダブルダッシュ』のような例は続くと考えられます。今はまだ限られたメーカーの限られたゲームではありますが、今後は特に注目タイトルに於いてはこのような世界同時発売も珍しくなくなるのではないでしょうか。
追記ですが、日本とカナダで開発を進めて、更には世界同時発売を達成した『メタルギアソリッド: ザ・ツインスネークス』の事例は非常に今後の参考になるのではないでしょうか。DICEなりE3なりで講演でもやればウケると思います、どうでしょうか?コナミさん。
(*)東亜プランが発売した『Zero Wing』をローカライズした際に生まれた和製英語(?)。響きの良さと全く意味が違ってくる文法的間違いでガイジンさんに大うけしたという話。「お前らの基地は我々がいただいた」というのが東亜プランが意図した所であったようだ。2001年のE3で任天堂は会場付近に「All your base are belong to Nintendo」という看板を立てていた。その通りこのE3では任天堂の大勝利に終わった。
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