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任天堂代表取締役 岩田聡氏による基調講演「ファミコンから20年:ゲーム産業の今とこれから」 概要

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任天堂代表取締役 岩田聡氏による基調講演「ファミコンから20年:ゲーム産業の今とこれから」 概要
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当日10:30から1時間にわたって行われた岩田氏による基調講演を、話の流れに沿って概要をまとめます。公演中の画像などは後ほど差し込みますのでご注意ください。

基調講演「ファミコンから20年:ゲーム産業の今とこれから」

まず、講演はファミコンの発売から今日にいたるまでをいくつかのフェイズに分け、それぞれの簡単な特徴付けて説明するところから始まります。

1983年にファミコンが発売された頃、当時はゲーム開発は基本的に極少人数(2,3人)を基礎に行われており、それに費やされるコストやヒューマン、エコノミックパワーは現在と比して非常に小さいものであった。しかし、そんな状況下でありながら10万本売れるものはザラ、100万本売れるものも実に珍しくないという、企業からしてみれば実に効率の良いビジネスモデルであったと述べています。

時は移り、1990年にスーパーファミコンが発売されることによってファミコン時代に存在していた多くの機械的なくさびから開発者が解き放たれることになりました。より良い絵にしたい、よりよい音にしたいという願いとともに、実現したい様々なアイディアが具体化されていったわけです。しかし、そんな中で大作主義が段々と実体化し始め、ソフトによっては開発チームが50人を越えるものが現れ始めた他、売れるものと売れないものの差が明確化し、大作の続編が多く発売されるようになった時期ともいえます。また、ゲームの大容量化、内容の複雑化にともなってゲームの値段の高騰が進み、1万円を超えるものまで現れたものの、実際にユーザーの中に受け入れられていく傾向が発現していました。

さらに、1994年にプレイステーション、セガサターン、1996年にNintendo64が発売され、家庭用ゲーム機に少し前までは予想だにしなかった3Dの世界が展開され始めます。これを3D第一世代と位置づけていました。当時は3Dグラフィックスが持つ強烈な新鮮さもあり、ブームとも言える勢いでありとあらゆるゲームの3D化が進みました。そんな中で開発費はさらに高騰の一途を辿ることになります。また、Nintendo64を除く次世代ハードは双方ともにディスクメディアを採用したため、開発費が上がっているにも関わらず価格は下がっていくという傾向になり、ビジネスモデルとしての効率性を下げてしまうことになっていきました。

しかし、当時のマシンは未だ3D世界を実現するのにやっとのスペックであり、ユーザーの更なるハイスペックを求める流れに呼応する形で2000年にプレイステーション2が、2001年にニンテンドーゲームキューブ、およびXboxが発売されました。第2世代のにおいてはプリレンダリングムービーの「垂れ流し」をする必要がないレベルにまでグラフィックス性能の向上が図られています。その一方で、PS2がDVD機能を搭載したことによってその売り上げの一翼を担ったように、ゲーム機に多機能化の兆しが見え始めました。第1世代に引き続き開発費の高騰は続き、枯れた技術によって生まれたはずの家庭ゲーム機史上は、いつの間にか最先端技術の結晶へと生まれ変わっていました。

これまでの経緯についてはここで終了し、ここからは現状の日本市場の分析に移っています。

現在、日本の国内市場ではソフト出荷額は1997年をピークに減少を続けている。景気や少子化の影響ではないかと言われてはいるが、これまでの20年間の中で景気の影響をさして受けたことがなく、またPS2などの市場においても縮小傾向が見られることからそれが原因とは考えにくい。結局のところ、現在まで存在した「大容量化、複雑化の成功メソッド」に限界がきているのだ、と分析しています。

今やTVゲームはユーザーの限られた時間を他のメディアを奪い合う競争の真っ直中にある。しかし、ゲームは時間とエネルギーをあまりに奪いすぎるとして敬遠する人が増えている、というのが岩田氏の述べるゲーム業界縮小傾向の原因となっている。これまでシューティングゲーム、2D格闘ゲームという2つのジャンルにおいて、大きく盛り上がるとともにより複雑化したゲームが増え、それとともに初心者への対応があまりなされなかったために衰退の一途を辿ってしまった、ということを指摘しました。

ファミコン発売から20年、劇的な進化を遂げたとともに様々なものを失ってきたTVゲームにとって、これまでのメソッドを一本槍に振りかざして突き進むのは非常に危険である、と述べた上で

 ・間口が広く、奥の深い商品の開発
 ・新規ユーザーの獲得
 ・既存ユーザーの確保、及びゲーム離れユーザーの呼び戻し

を考えることが重要であると提示しました。

ここで、分析の視点を北米市場に移しています。北米では、非常に各商品の寿命が短いと言われる日本とは対極的にヒットソフトが長く売れる、懐の深い非常に良い市場となっているのだそうです。しかし、北米市場ではいくつかの理由において現在の右肩成長が今後も続くとは考えにくい、としています。その理由としては、現在北米市場においてもスポーツゲームなどの分野においてリアルなグラフィックを誇るゲームが非常に増えているが、そのグラフィックが持つ新鮮味もいずれは失われるであろうと思われること、そして、日本と同じ時間とエネルギーを食い過ぎるために敬遠する人が増えてくる可能性が高い、ということです。

また、以前と比べ、日本製のソフトがあまり歓迎されていない傾向があるそうです。というのも、以前はグラフィックス性能の不足などから各ユーザーの想像力によって補っていたものがはっきりと表現されるようになり、個々の国や文化による嗜好の違いが表面化してきているということ。また、欧米ソフトの発展にともない日本のソフトのプレイコントロールについての優位性が喪失されてきていること、などが上げられ、今や世界的に売れるソフトの開発は難しくなった、と述べました。

そのような中で、例外的に世界的に売れたゲームソフトとして『ポケモン』を取り上げました。一時期はポケモンのブームは終わった、と言われていましたが、『ポケットモンスター ルビー・サファイア』は世界中で1000万本を越えるヒット作になりました。リアルなグラフィックでなく、大容量でもなく、また3Dですらないポケットモンスターがなぜここまで大ヒットとなったのか、それこそ「間口の広さと奥の深さ」「初心者も入りやすい導入の丁寧さ」そして交換、対戦などを可能とする「閉じていないコンセプト」であるとしました。また、これは重厚長大路線に対するアンチテーゼに他ならないと考えます。

そんな中、TVゲーム業界の次なるトレンドは何か?更なる新技術が業界を動かすか?それともDVDプレイヤー以外に更なる機能を身につけた多機能マシンが活躍するのか?まず、岩田氏は多機能マシン化への懸念から述べ始めました。たしかにPS2におけるゲームとDVDの共存は上手くいった。それはゲームを見るという行動とDVDを見るという行動が両立しないからであり、そういった住み分けをきちっとし、ある機能を使うことによってもう一方の機能を阻害してしまうような多機能は要らない、としています。

また、ネットワークゲームに関しても、エンターテインメントを深める要素としてネットワークゲームの存在は否定しないし、任天堂は以前からもネットワークゲームには挑戦してきた。しかし、ブロードバンドがいかに普及したといっても、それはあくまでもパソコンにおけるものであることがほとんど議論されていない。実際に現状からゲーム機でのネットワークを使おうとした場合、機器の設営および設定が必要となるが、もともと技術畑の人間である自分でも苦労するものが一般の方々に楽になるとはとても思えない。将来的にネットワークが空気のように存在する時代がいずれくると楽観視しているが、そういったものは最低限数年先であろうと考えている。

と、述べた上で任天堂の考える新たなネットワーク構想について打ち出されました。先日お伝えした『ポケットモンスター赤・緑』のリメイク作『ポケットモンスター ファイアレッド・リーフグリーン』において開発中のワイヤレスアダプタが採用される、とのことです。同ソフトにワイヤレスアダプタを同梱し、利用料無しでサービスが行われる。通常は通信ケーブルをワイヤレス化した形になるが、駅や店舗(ポケモンセンター等?)などに無線基地局を配置することでデータ配信サービスやそれを利用したスタンプラリーなども行え、またその基地局がネットにつながることによって遠隔地との通信も行うことができるであろうと述べました。このアダプタの開発にあたってはモトローラの独自技術が採用されており、比較的ブルートゥースなどに近いものになっているそうです。『ポケモン』とともにワイヤレスアダプタが大量に出回ることによってゲームボーイ独自の新しい遊びの構造が生み出されるであろう、と述べました。また、ワイヤレスアダプタが同梱されても、値段は4800円(税別)のまま据え置く、とのことです。

ここで話は代わり、中国市場に関しての話に移っています。

中国は一国単位の人工が非常に多く、また経済成長も著しいため市場としては非常に優良であるのだが、ビジネスモデルが異なるためそのまま持ち込むことが非常に難しかった。そこで、今回任天堂は新たなビジネススキームを用意し、単純な輸出企業としてではなく、現地技術の育成とゲーム産業の育成を狙った「神遊(しんゆう)」という会社を立ち上げてビジネス展開を行うことになったそうです。

中国での展開のカギとして、用意されたのが新ハードとなる「神遊機」、「Ique Player」です。コントローラ形状としては、ゲームキューブと同じ配置のコントロールスティック、十字キーとnintendo64と同じAB、Cボタンユニット、LRボタンがあるといった感じでしょうか。

最新のSOC技術を用いて設計され、まずはnintendo64以前のソフトの中国版をメインに展開されます。また、いずれ「神遊」が開発する中国製のソフトが動くように開発されているそうです。値段は本体が498元(7000円)、ソフトが48元(700円)だそうな。また、本体にはソフトを同梱して発売だそうです。

この「神遊機」については独特のソフト流通を取ることになっており、独自のネット流通を通じてダウンロード購入することになります。まずは、特約店でのオンデマンドダウンロード方式から開始するそうです。それをDLしたカセットをコントローラ下部に挿入することによってプレイ可能になります。

今まで、いかなる産業においても30年間続いたビジネスモデルは存在せず、今ゲーム業界は今後を考える上で非常に重要な岐路に立たされているのだ、そう締めくくり、基調講演は終了しました。

途中何カ所かある会社をチクチクとつっつくような表現も見られましたが以前に比べると社長らしさが板についてきたかな?という気がします。組長を引き継ぐだけでなく、しっかりと自らの信念とともに任天堂という老舗と業界を引っ張っていって頂きたいものです。
《織機 綺音》

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